国債の暴落はない!? |
高橋教授の主張(一部引用)
「この「財政破たん研究会」の根本的な問題は、日本の財政状況をしっかりと数量的に把握していないことだ。債務残高について、グロスなのかネットなのかさえ明確ではなく、何となくグロスと思い込んでいるようだ。参加している経済学者は、会計的な知識が乏しく、国のバランスシートさえ頭に浮かばないようだ。
債務残高は、国のバランスシートからネットで見て日本は500兆円、GDP比で100%。同じベースでアメリカとイギリスを見てみると、それぞれ80%、80%。日銀も含めた連結ベース(経済学でいえば統合政府ベース)では日本は200兆円、GDP比で40%程度である。同じベースでアメリカとイギリスを見れば、それぞれ65%程度、60%程度だ」
2013年バランスシート(単位:兆円)
資産 | 653 | 負債 | 1143 | |||
内訳 | 現金預金 | 19 | 公債 | 856 | ||
有価証券 | 129 | 短期証券 | 102 | |||
貸付金 | 138 | 借入金 | 28 | |||
出資 | 66 | |||||
小計 | 352 | 小計 | 986 | |||
有形固定資産 | 178 | 公的預り金 | 112 | |||
運用寄託金 | 105 | その他 | 45 | |||
その他 | 18 |
「国債暴落論は的外れである。インフレ目標の中での量的緩和は国債の負担を緩和させ、むしろ財政再建に貢献する。量的緩和によって国債が暴落することはまずありえない。国債が暴落すると言って量的緩和に懐疑的であった学者は、本質を見誤っている。それでも、量的緩和の出口になったら国債暴落すると、苦し紛れの言い訳をする人もいる。
しかし、量的緩和の出口はインフレ目標2%を達成して、経済が正常化されたときなので、長期金利は4~5%になっているはずだ。今と比べれば、国債価格は下がる(金利は上昇)が、その場合、名目成長率は高くなって税収も増えている。財政は好転しているのだから、そもそも経済成長に伴って長期金利が上がっても、何も問題ない。そうしたときに国債暴落と騒ぐ人はいない」 http://diamond.jp/articles/-/84548?page=3
ここでの問題は、「量的緩和によってインフレ目標2%を達成する」「名目成長率が高くなって税収も増えている」ことが“既定のこと”とされていることだ。今、その2%のインフレ目標が達成できるかどうかが議論になっているのである。そしてその議論では、ゼロ金利のもとでいくら量的緩和をしても、2%のインフレ目標達成は難しい、というのが大勢だ。日銀が2013年4月、量的緩和により15年までに2%の物価上昇を実現するとした目標は、1年先送りされた。人間の経済活動は思惑通りにいくものではないから、先送りそのものは批判されるべきではない(批判している学者、評論家もいるが)。問題は、量的緩和が物価上昇に繋がるという経済理論が現下の条件で成り立つのか、である。
企業は、生産工場など多くを海外に移転して国内投資は控える構造になっている。投資意欲の誘因は投資に対する利潤率であって、(低/ゼロ)金利だけではない。国内需要が見込めなければ設備投資はしない。消費者は住宅や車、電化製品など新たに買いたいものが成長時代に比べ少なくなり、非正規雇用者の比率は上がり、実質賃金は上がっていない。年金など将来の不安もある。まして人口も減少している。中国経済も鈍化している。それらを無視してインフレ誘導が可能とする高橋理論は説得力がないと思うのだが。
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