2016年 03月 06日
奥津国道の水彩画 |
先年通っていた眼科医院で、ロビーの壁に掛けられていた水彩画に引き込まれるように目がとまった。かねて求めていた画風であったからである。サインを見ると、奥津国道とある。初めて知る画家だった。帰宅後ネットで調べると、長年懐かしの「平凡パンチ」の表紙絵を描いていて、その後水彩画家として数多くの指導書を出版していることがわかった。早速取り寄せて模写を繰り返すも、まだ足元にも及ばない。
水彩画家奥津国道の画風とは、一言で言えば写実的な技法を駆使したものである。特に、海や川の水面とそこに映る岸辺の景色を描く技法に魅了される。絵の具の上塗りや削り取りが可能な油絵と違って、水彩画は修正がきかないので、対象物を写実的に描くのは水彩画ならでの限界がある。だから多くの水彩画は、画題を印象的にとらえる技法をもちい(この場合の“印象的”というのは、油絵における印象派を意味するものではないが)、指導書もそれらに沿ったものが多い。毎年一度はスケッチのためにフランスに行くと言う奥津は、フランスの小都市に画題を求め、時にその土地の人たちと会話しながら絵筆を滑らせるという。そういう明るくて暖かい雰囲気を観る者にかよわせる絵が魅力的である。
語弊があるだろうが、印象的な水彩画は、描こうと思えば短時間でサラサラっと描ける。 むかし40年ほど前、団体旅行でヨーロッパに行った時、観光地でバスから降りるたびにガイドの説明から離れて、スケッチブックに水彩画をサラサラッと描いていた同行の男性がいて羨ましく思ったものだ。もっとも彼は、そのたびにバスの出発時刻に遅れて、みんなの冷たい視線をうけていたのであるが。当時とすれば、現在のように海外旅行が手軽にできる時代が来ようとは予想できなかったので、彼にすれば2度とない貴重なスケッチの機会と思ったのかもしれない。
ピアノは音楽教室に通い、書道は2年間の通信教育を受けたが、絵に関しては“独学”を通している。だから、基礎であるデッサンの力が身についていないのが弱みである。デッサンは対象物を描く土台である。土台が弱ければ、絵らしい絵が描けるはずはない。奥津は指導書の中でそのことを強調して「私は一枚の絵を完成するまでに約3時間かかるが、そのうち2時間をデッサンにあてる」と言っている。翻って控えし者がデッサンに費やすのは、精々1時間といったところ。長年のデッサン力(りょく)の積み重ねがないうえに、歳のせいで根気が続かないのがもどかしい。
奥津国道「水彩画プロの裏ワザ」講談社 模写=奥津国道「水彩画プロの裏ワザ1」から
安楽寺三重塔(埼玉県吉見)*我流で描き始めた絵
気ままな模写 原画:ハンス・オルデ・フリードリヒ・ニーチェ
原画:中山 忠彦・羽毛のショール
原画:ヴェロッキオ・女性の頭部 榎並悦子写真・舞台踊りにポーズもきまる
原画:杉並 寧・ナイルの女
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水彩画家奥津国道の画風とは、一言で言えば写実的な技法を駆使したものである。特に、海や川の水面とそこに映る岸辺の景色を描く技法に魅了される。絵の具の上塗りや削り取りが可能な油絵と違って、水彩画は修正がきかないので、対象物を写実的に描くのは水彩画ならでの限界がある。だから多くの水彩画は、画題を印象的にとらえる技法をもちい(この場合の“印象的”というのは、油絵における印象派を意味するものではないが)、指導書もそれらに沿ったものが多い。毎年一度はスケッチのためにフランスに行くと言う奥津は、フランスの小都市に画題を求め、時にその土地の人たちと会話しながら絵筆を滑らせるという。そういう明るくて暖かい雰囲気を観る者にかよわせる絵が魅力的である。
語弊があるだろうが、印象的な水彩画は、描こうと思えば短時間でサラサラっと描ける。 むかし40年ほど前、団体旅行でヨーロッパに行った時、観光地でバスから降りるたびにガイドの説明から離れて、スケッチブックに水彩画をサラサラッと描いていた同行の男性がいて羨ましく思ったものだ。もっとも彼は、そのたびにバスの出発時刻に遅れて、みんなの冷たい視線をうけていたのであるが。当時とすれば、現在のように海外旅行が手軽にできる時代が来ようとは予想できなかったので、彼にすれば2度とない貴重なスケッチの機会と思ったのかもしれない。
ピアノは音楽教室に通い、書道は2年間の通信教育を受けたが、絵に関しては“独学”を通している。だから、基礎であるデッサンの力が身についていないのが弱みである。デッサンは対象物を描く土台である。土台が弱ければ、絵らしい絵が描けるはずはない。奥津は指導書の中でそのことを強調して「私は一枚の絵を完成するまでに約3時間かかるが、そのうち2時間をデッサンにあてる」と言っている。翻って控えし者がデッサンに費やすのは、精々1時間といったところ。長年のデッサン力(りょく)の積み重ねがないうえに、歳のせいで根気が続かないのがもどかしい。
奥津国道「水彩画プロの裏ワザ」講談社
安楽寺三重塔(埼玉県吉見)*我流で描き始めた絵
by rakuseijin653
| 2016-03-06 08:00
| 美術
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