2017年 05月 26日
「人口減少はこわくない」? |
文藝春秋6月号で、「人口減少はこわくない・経済成長をあきらめるな」というタイトルで学識者が議論している。
論者は、吉川洋立正大学(元東大)教授、増田寛也元総務大臣、藻谷浩介日本総合研究所研究員で進行役を社会学者の古市寿憲がつとめている。しかしここで論じられていることの多くは、タイトルの「人口減少はこわくない」とは裏腹に「人口減少による問題点」の指摘である。
日ごろわれわれが気が付かない点も論じられているので、下記に論点をまとめてみる。
◎日本の人口は2040年に8,808万人になり(国立社会保障・人口研究所)人口減少はくいとめられない。
戦争前後に毎年200万人以上生まれた世代がこれから亡くなり始めるのに、赤ちゃんが毎年100万人しか生まれていない。今出産しているのは、毎年150万人前後生まれた世代だが、今の乳幼児が出産する頃には親世代が今の三分の二になるので、子どももさらに減る。
しかも生産年齢人口は、過去5年間で1000万人減りこれから先40年で3000万人減ると言われている。いま日本に住んでいる240万人の外国人が倍に増えても焼け石に水。これは移民では補えないレベルである。
◎東京圏の高齢化は深刻である。
東京圏(一都3県)はこの5年間で総人口が51万人増え一極集中だといわれて見過ごされがちだが、そのなかの人口構成をみると、65歳以上の高齢者が134万人増え、そのうち75歳以上が76万人、80歳以上は52万人増えている。生産年齢人口は75万人減っている。総人口増51万人と言っても、増えたのは80歳以上だけということになる。高度経済成長時代に集まった人たちがそのまま歳をとったわけだ。彼らが退職して住民税収が減りその結果、福祉医療体制が追いついていない。総人口増ならOKというのは勘違いである。
◎人口が減少しても国のGDPを落とさないようにするには、イノベーションによって一人当たりの生産性を上げることが重要である。
先進国では、人口よりも一人当たりのGDPの伸びが高い。日本の高度経済成長期は成長率が10%台、労働人口の伸び率は1%台だった。要は、一人当たりGDPを伸ばせれば人口が減少しても経済成長ができる。
そのためには、非正規雇用者を正社員にするのも、保育所を増やして女性の就労率を上げるのも、個人所得と個人消費を増やして生産性を上げる本筋である。
非正規雇用者は30年前は16%ほどであったが、直近では38%にまで増えている。30~34歳の男性正社員の有配偶率が6割以上であるのに比べ、非正規雇用者は3割を切る。非正規雇用者で結婚までたどりつけていない人が増えたために、少子化が進んだとも解釈すべきではないか。
沖縄や過疎地では独身女性も多いが、都会と違い4・5人の子どもを産む女性が多く、それを周囲が支える伝統がある。家賃や物価も安いので住みやすい。インターネットの普及で知識集約型の仕事なら都市に留まる必要性は薄くなる。買い物もネット通販でできる。最近の若者は「都落ち」という感覚はあまりないのではないか。地方在住の若者を増やせれば、経済を成長させるイノベーションと言える。
「高度経済成長時代に集まった人たちがそのまま歳をとって退職し、住民税収、福祉医療の足を引っ張っている」という指摘は、当事者の一人として耳の痛いところである。しかし、現役時代には税収に十分貢献してきたという“自負”?もある。だが総論としては、「2013年の現役世代が2.5人で一人の高齢者を支えていたのが2031年には1.8人で支えなければならなくなる」となると深刻だ。社会福祉政策が結果する財政破たんを避けるための消費税増税と経済成長(のためには増税できない)という相反する政策をどう舵取りするか、という解を求める難題は続く。
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論者は、吉川洋立正大学(元東大)教授、増田寛也元総務大臣、藻谷浩介日本総合研究所研究員で進行役を社会学者の古市寿憲がつとめている。しかしここで論じられていることの多くは、タイトルの「人口減少はこわくない」とは裏腹に「人口減少による問題点」の指摘である。
日ごろわれわれが気が付かない点も論じられているので、下記に論点をまとめてみる。
◎日本の人口は2040年に8,808万人になり(国立社会保障・人口研究所)人口減少はくいとめられない。
戦争前後に毎年200万人以上生まれた世代がこれから亡くなり始めるのに、赤ちゃんが毎年100万人しか生まれていない。今出産しているのは、毎年150万人前後生まれた世代だが、今の乳幼児が出産する頃には親世代が今の三分の二になるので、子どももさらに減る。
しかも生産年齢人口は、過去5年間で1000万人減りこれから先40年で3000万人減ると言われている。いま日本に住んでいる240万人の外国人が倍に増えても焼け石に水。これは移民では補えないレベルである。
◎東京圏の高齢化は深刻である。
東京圏(一都3県)はこの5年間で総人口が51万人増え一極集中だといわれて見過ごされがちだが、そのなかの人口構成をみると、65歳以上の高齢者が134万人増え、そのうち75歳以上が76万人、80歳以上は52万人増えている。生産年齢人口は75万人減っている。総人口増51万人と言っても、増えたのは80歳以上だけということになる。高度経済成長時代に集まった人たちがそのまま歳をとったわけだ。彼らが退職して住民税収が減りその結果、福祉医療体制が追いついていない。総人口増ならOKというのは勘違いである。
◎人口が減少しても国のGDPを落とさないようにするには、イノベーションによって一人当たりの生産性を上げることが重要である。
先進国では、人口よりも一人当たりのGDPの伸びが高い。日本の高度経済成長期は成長率が10%台、労働人口の伸び率は1%台だった。要は、一人当たりGDPを伸ばせれば人口が減少しても経済成長ができる。
そのためには、非正規雇用者を正社員にするのも、保育所を増やして女性の就労率を上げるのも、個人所得と個人消費を増やして生産性を上げる本筋である。
非正規雇用者は30年前は16%ほどであったが、直近では38%にまで増えている。30~34歳の男性正社員の有配偶率が6割以上であるのに比べ、非正規雇用者は3割を切る。非正規雇用者で結婚までたどりつけていない人が増えたために、少子化が進んだとも解釈すべきではないか。
沖縄や過疎地では独身女性も多いが、都会と違い4・5人の子どもを産む女性が多く、それを周囲が支える伝統がある。家賃や物価も安いので住みやすい。インターネットの普及で知識集約型の仕事なら都市に留まる必要性は薄くなる。買い物もネット通販でできる。最近の若者は「都落ち」という感覚はあまりないのではないか。地方在住の若者を増やせれば、経済を成長させるイノベーションと言える。
「高度経済成長時代に集まった人たちがそのまま歳をとって退職し、住民税収、福祉医療の足を引っ張っている」という指摘は、当事者の一人として耳の痛いところである。しかし、現役時代には税収に十分貢献してきたという“自負”?もある。だが総論としては、「2013年の現役世代が2.5人で一人の高齢者を支えていたのが2031年には1.8人で支えなければならなくなる」となると深刻だ。社会福祉政策が結果する財政破たんを避けるための消費税増税と経済成長(のためには増税できない)という相反する政策をどう舵取りするか、という解を求める難題は続く。
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by rakuseijin653
| 2017-05-26 08:00
| 政治
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