2014年 04月 17日
法人税率引き下げへの賛否(2) |
法人税収入は約9兆円で国税の20%を占める。所得税、消費税に次いで3番目に多い。だから、代替財源なしに、または減税による〝増収”の見込みなしに引き下げるのは財政への影響が大きい。しかし先の政府税制調査会では財源は単年度ではなく中期的に「税収中立」を図るとして、法人税減税を先行させる考えも出されたようである。
そうは言うものの、代替財源なしに法人税を仮に10%下げたら国家収入は約5兆円減少する。今回の消費税3%アップ分が8兆円だからその60%が食われてしまうことになるのである。法人税引き下げのため消費税を上げたのか、という議論が再燃すれば、消費税の更なる2%の増税は難しくなるだろう。
財源論とは別に、減税による投資効果への疑問から、反対する学者もいる。
大竹文雄大阪大学教授は、日本企業の投資効率性の観点から疑問を呈している(「法人税減税論議で欠かせない視点」日本経済研究センター・14年3月26日)。
○投資の効率性は、投資された額がどの程度企業価値を高めるかということだが、1970年以降の国内企業の投資効率をみると、投資してもそれに応じた企業価値の増加がみられない
その原因として考えられるのは、
○株主や消費者からみて貴重な資源を無駄遣いになるような非効率な投資をしているのではないか、
○あるいは、国の様々な規制によって効率的な投資が妨げられていないか、
○また、経営者の目的と株主や債権者、労働者との利害が対立して企業統治がうまく機能していないのではないか、ということがある。
○これらが日本の特性であるとすれば、それらを改善、改革することが先決である。
また野口悠紀男早稲田大教授は、法人税を負担している企業が、全法人の27.7%しかない現実及び自動車などの生産拠点の海外移転の必然性から減税効果に疑問を呈する。(「『高い法人税率が国際競争力を妨げている』は間違い」・東洋経済・2013年7月1日)
○成長戦略では、2012年の民間企業設備投資額63兆円を70兆円にする旨表明されている。この増加額7兆円を法人税を負担している27.7%の企業で投資するとすれば、それらの企業は現在よりも40%(63兆円x27.7%=17.5兆円→→7兆円÷17.5兆円=0.4)投資を増加しなければならない。これは到底不可能であろう。
○(法人税減税とは別に投資減税が提案されることがあるが)自動車産業で成長が見込まれるのは海外需要であるから、海外移転は既定路線である。鉄鋼や石油化学などは供給過剰で設備削減をしている。これらは減税によって変わるとは思えない。
○また、財政悪化で長期金利の上昇が予想されれば企業の投資意欲は抑制される。
4月16日の日本経済新聞の「法人減税すみやかに」と題したコラム「大機小機」(筆者は匿名部外者)では、「金融政策を通じたデフレ克服、規制緩和による潜在成長力の引き上げなど同時に進める必要があるが」としながら、「1円の法人減税で投資額は6円増え税収も増える、という関西社会経済研究所による量子分析は、経済のデフレ克服が進む中で、経済の拡大を実現するシナリオとして参考になる」と述べている。
しかし、そんなウマイ話が実現可能なら、何も専門家が何時間もかけて議論しても方策が定まらない、ということにはならないのである。
そうは言うものの、代替財源なしに法人税を仮に10%下げたら国家収入は約5兆円減少する。今回の消費税3%アップ分が8兆円だからその60%が食われてしまうことになるのである。法人税引き下げのため消費税を上げたのか、という議論が再燃すれば、消費税の更なる2%の増税は難しくなるだろう。
財源論とは別に、減税による投資効果への疑問から、反対する学者もいる。
大竹文雄大阪大学教授は、日本企業の投資効率性の観点から疑問を呈している(「法人税減税論議で欠かせない視点」日本経済研究センター・14年3月26日)。
○投資の効率性は、投資された額がどの程度企業価値を高めるかということだが、1970年以降の国内企業の投資効率をみると、投資してもそれに応じた企業価値の増加がみられない
その原因として考えられるのは、
○株主や消費者からみて貴重な資源を無駄遣いになるような非効率な投資をしているのではないか、
○あるいは、国の様々な規制によって効率的な投資が妨げられていないか、
○また、経営者の目的と株主や債権者、労働者との利害が対立して企業統治がうまく機能していないのではないか、ということがある。
○これらが日本の特性であるとすれば、それらを改善、改革することが先決である。
また野口悠紀男早稲田大教授は、法人税を負担している企業が、全法人の27.7%しかない現実及び自動車などの生産拠点の海外移転の必然性から減税効果に疑問を呈する。(「『高い法人税率が国際競争力を妨げている』は間違い」・東洋経済・2013年7月1日)
○成長戦略では、2012年の民間企業設備投資額63兆円を70兆円にする旨表明されている。この増加額7兆円を法人税を負担している27.7%の企業で投資するとすれば、それらの企業は現在よりも40%(63兆円x27.7%=17.5兆円→→7兆円÷17.5兆円=0.4)投資を増加しなければならない。これは到底不可能であろう。
○(法人税減税とは別に投資減税が提案されることがあるが)自動車産業で成長が見込まれるのは海外需要であるから、海外移転は既定路線である。鉄鋼や石油化学などは供給過剰で設備削減をしている。これらは減税によって変わるとは思えない。
○また、財政悪化で長期金利の上昇が予想されれば企業の投資意欲は抑制される。
4月16日の日本経済新聞の「法人減税すみやかに」と題したコラム「大機小機」(筆者は匿名部外者)では、「金融政策を通じたデフレ克服、規制緩和による潜在成長力の引き上げなど同時に進める必要があるが」としながら、「1円の法人減税で投資額は6円増え税収も増える、という関西社会経済研究所による量子分析は、経済のデフレ克服が進む中で、経済の拡大を実現するシナリオとして参考になる」と述べている。
しかし、そんなウマイ話が実現可能なら、何も専門家が何時間もかけて議論しても方策が定まらない、ということにはならないのである。
by rakuseijin653
| 2014-04-17 08:00
| 政治
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