2015年 01月 14日
漱石の「皇室観」 |
前稿で引用した「漱石日記」には、漱石の「皇室観」ともいうべき記述もみられる。皇族を形式的に敬うことの愚かしさを冷静な目で批判しているのだ。
国民に対して「開かれた皇室」であることが望ましいとは、戦後の民主主義時代になってようやく言われるようになったことであるが、100年以上前の明治に漱石はそのことを言っている。しかし、大正を経て昭和に入り軍国主義が国を支配するに至り、天皇はますます神格化され国民から遥か遠い存在になった。そして漱石が予言したとおり国は「亡びた」。
以下再び、「漱石日記」から。
<明治45年6月10日(月)行啓能を見る。
皇后陛下、皇太子殿下喫梱せらる。しかして我ら禁咽也。これは陛下・殿下の方で我ら臣民に対して遠慮ありて然るべし。もし自身喫咽を差支えなしと思はば臣民にも同等の自由を許さるべし。何人か咽草(タバコ)を咽管に詰めて奉ったり、火を着けて差し上げるは見ていても片腹痛きことなり。死人か片輪にあらざればこんな事を人に頼むものあるべからず。咽草に火をつけ、咽管に詰める事が健康の人に取ってどれほどの労力なりや。かかる愚かなる事に人を使う所を臣民の見ている前で憚らずせらるるは見苦しき事なり。直言して止めらるるよう取り計らいたきものなり。宮内省のものにはかほどの事が気が付かぬにや。気が付いてもそれしきの事がいいにくきや。驚くべき沙汰也。
帝国の臣民、陛下・殿下を口にすれば馬鹿丁寧な言葉さえ用いれば済むと思えり。真の敬愛の意に至ってはかえって解せざるに似たり。言葉さえぞんざいならすぐ不敬事件に問うたところで本当の不敬罪人はどうする考えにや。これも馬鹿げた沙汰也。
皇室は神の集合にあらず。近づきやすく親しみやすくして我らの同情に訴えて敬愛の念を得らるべし。それが一番堅固なる方法也。政府及び宮内官吏の遣り口もし当を失すれば皇室いよいよ重かるべし。しかし同時に臣民のハートいよいよ離れ去るべし。>
自民党の憲法改定草案では、天皇を元首にすると規定している。これは、人間天皇の自由意思を無視して身分を拘束するものである。政治家が勝手に天皇の人権を無視して、再び政治的に利用するということがあっていいのだろうか。もちろん政治家は国民の代表であるから、国民がそれを望むかどうかの問題である。
国民に対して「開かれた皇室」であることが望ましいとは、戦後の民主主義時代になってようやく言われるようになったことであるが、100年以上前の明治に漱石はそのことを言っている。しかし、大正を経て昭和に入り軍国主義が国を支配するに至り、天皇はますます神格化され国民から遥か遠い存在になった。そして漱石が予言したとおり国は「亡びた」。
以下再び、「漱石日記」から。
<明治45年6月10日(月)行啓能を見る。
皇后陛下、皇太子殿下喫梱せらる。しかして我ら禁咽也。これは陛下・殿下の方で我ら臣民に対して遠慮ありて然るべし。もし自身喫咽を差支えなしと思はば臣民にも同等の自由を許さるべし。何人か咽草(タバコ)を咽管に詰めて奉ったり、火を着けて差し上げるは見ていても片腹痛きことなり。死人か片輪にあらざればこんな事を人に頼むものあるべからず。咽草に火をつけ、咽管に詰める事が健康の人に取ってどれほどの労力なりや。かかる愚かなる事に人を使う所を臣民の見ている前で憚らずせらるるは見苦しき事なり。直言して止めらるるよう取り計らいたきものなり。宮内省のものにはかほどの事が気が付かぬにや。気が付いてもそれしきの事がいいにくきや。驚くべき沙汰也。
帝国の臣民、陛下・殿下を口にすれば馬鹿丁寧な言葉さえ用いれば済むと思えり。真の敬愛の意に至ってはかえって解せざるに似たり。言葉さえぞんざいならすぐ不敬事件に問うたところで本当の不敬罪人はどうする考えにや。これも馬鹿げた沙汰也。
皇室は神の集合にあらず。近づきやすく親しみやすくして我らの同情に訴えて敬愛の念を得らるべし。それが一番堅固なる方法也。政府及び宮内官吏の遣り口もし当を失すれば皇室いよいよ重かるべし。しかし同時に臣民のハートいよいよ離れ去るべし。>
自民党の憲法改定草案では、天皇を元首にすると規定している。これは、人間天皇の自由意思を無視して身分を拘束するものである。政治家が勝手に天皇の人権を無視して、再び政治的に利用するということがあっていいのだろうか。もちろん政治家は国民の代表であるから、国民がそれを望むかどうかの問題である。
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by rakuseijin653
| 2015-01-14 08:00
| 天皇
|
Comments(1)
Commented
by
新保 晃
at 2018-05-26 17:07
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「政治家は国民の代表であるから、国民がそれを望むかどうかの問題である。」・・・国民は「それ」を望まないときも「それ以外」の政策(たとえば身近な「経済政策が成功していればそれによる景気の好調」)を優先する(目先の利益を優先する)だろうからどうしても政権党が有利にはたらく。
朝河貫一の言うごとく「もし日本人が真の民主主義を願うなら、市民一人ひとりが良心に対する危機感を強くしそれぞれが個人的な責任を果たすことである」をかみしめています。
朝河貫一の言うごとく「もし日本人が真の民主主義を願うなら、市民一人ひとりが良心に対する危機感を強くしそれぞれが個人的な責任を果たすことである」をかみしめています。
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